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  • 続「新聞では書かない、ミャンマーに世界が押し寄せる30の理由」vol.7

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    第7回 「ミャンマー通信事情~携帯電話編Vol.1」

    今、ミャンマー国民の間で一番ホットな話題と言えば間違いなく「携帯電話」である。今月(2014年8月)からOoredoo社(カタール)が、来月からはTelenor社(ノルウェー)が新たにサービスを開始する予定になっている。先月には民営化を予定しているMPT(The Myanma Posts and Telecommunications)の事業パートナーとしてKDDI・住友商事の企業連合が指名され、上記2社を迎え撃つ態勢が整った。「地上最後」とも言われる未開の携帯電話市場を巡ってまさに三つ巴の激戦の火ぶたが切って落とされたのである。

    今までは通信省傘下の公社であるMPTが独占的にサービスをおこなっていたため、ユーザーにとっては選択の余地はなく、また回線の供給も少なかったため国民の間では不満が高まっていた。2014年現在の携帯電話加入者数は930万人と発表されているので、普及率はいまだ15%程度に過ぎない。

    政府は2016年までに普及率を80%以上にすることを政策目標に掲げ、携帯通信事業を外資に開放することを決定、国際公開入札が実施され2013年6月に上記2社に事業許可を与えた。以後、両社は急ピッチで通信網とシステムの構築をすすめ、わずか1年でサービスの開始にこぎつけた。両社の投資金額は数千億円規模と言われている。今、ヤンゴンの街頭には至る所に携帯事業者や端末メーカーの大きな看板が立ち並んでいる。

    ミャンマーで今まで携帯電話が普及してこなかった最大の理由はその価格である(正確にはSIMカードの価格)。ミャンマーで初めて携帯電話システムが導入されたのは1993年からだそうだが、当時の販売価格は7,000ドルであったという。その後次第に価格は下がっていったが、それでも5年前までは2,000ドルはした。MPTからの供給が限られていたため、一般人が入手することは難しく、プレミアムがついた「市場価格」が形成されSIMカードが高値で売買されていたのである。著書にも書いたが、携帯ビジネスは特権階級の重要な収入源の一つであった。

    2012年には中国政府の援助により、プリペイド方式のSIMカードが毎月35万枚供給されるようになったが、それでも価格は250ドル以上であった。ところが、一向に進まない改革に業を煮やした大統領が2013年4月に大統領令を発令、SIMカードの公定価格は一気に1,500Kyat(約2ドル)となった。自動車の輸入規制の緩和に続き、民主化を進めるテインセイン政権の象徴的な改革の一つと言えよう。これで、ようやく誰でも携帯電話が手に入る時代になったのである。

    MPTのサービスに不満を持っていた既存ユーザーの新規参入組への期待も高く、8月2日に販売が開始されると人々はOoredooのSIMカードを求めて販売店に殺到した。キャリア間でナンバー・ポータビリティの制度がないため、自分の電話番号を変えることを嫌う既存ユーザーは必然的に端末も購入することになる(デュアルSIM対応というSIMカードが2枚使える機種も人気)。先月、面談したTelenor社のマネージャーによれば「この2年間で6,000万台以上の端末が販売されるだろう」とのことである。

    巨大市場を巡るキャリア間の競争はこれからだが、既に端末メーカー間の競争は始まっている。昨年まではSumsung、LGといった韓国勢や、台湾のHTCといったブランドが人気だったが、今年に入り、Huawei、ZTEなどの中国勢が低価格を武器に急速にシェアを伸ばしている。

    私も早速Ooredoo社のSIMを入手し、新しい端末を購入してみた。下の写真をご覧いただきたい。左はSamsung社製の端末で2年前に2万円程度で購入したもの、右が今回購入した中国ZTE社製の端末で価格は55,000Kyats(5,900円)である。性能のほどはともかくとして、最新のスマートフォンが6千円程度で購入できるようになったので、今後ミャンマーでも情報化が一気に進展することは間違いない。いまだ電気も十分にきていない農村部にすむ人々がインターネットにも接続できるスマートフォンをどのように使いこなしていくのか楽しみである。ミャンマー語によるアプリやコンテンツの開発も進んでいくだろう。

    さて、新規参入を果たしたOoredoo社には「つながらない!」という苦情が殺到しているそうだ。わずか1年の準備期間でサービスを開始したため、基地局の整備が十分でなく電波が届かないエリアがかなりあるという。8月24日現在、私の自宅アパートにも電波が届いていない(笑)。データ通信は3G方式でMPTと比較すればかなり接続スピードは速いのだが、従量制課金のためいわゆる「パケ死」する人が続出、「(データ通信の)料金が高すぎる!」という声も多い。

    OoredooにするかTelenorか、あるいはKDDIの技術で復活するかもしれないMPTか?携帯キャリアの選択を巡ってしばらくはミャンマー国民の悩みは尽きないが、いずれにしても選択肢が増えて、競争によりサービスが向上することはユーザーにとって大変結構なことである。ミャンマーの発展のために大きな前進となることは間違いない。

    下記の写真にある本はMMRD社が発行している”Myanmar ICT Directory”の2014年度版(発行部数10,000部)である。全ページカラー印刷で400ページにおよぶ。巻頭ページの特集では22ページにわたってミャンマーのICT産業の現況が英語でわかりやすく解説されている。中身はヤンゴンとマンダレーにあるコンピュータと電子機器の関連企業の住所録で、業界団体であるMCIA(Myanmar Computer Industry Association)の会員名簿も掲載されている。携帯電話、コンピュータの販売店や、専門学校の広告が目立つが、中にはソフトウェア開発やWebサイト制作などの企業の広告もある。これ1冊でほぼミャンマーのICT産業の概要がわかるので業界関係者の方にはお勧めの1冊である。

    9/04/2014

    Samsung(左) ZTE(右)

    Ooredoo SIMカード

    Ooredoo Shop

    Telenor 本社

    ICTDictionary

    松下英樹

    松下英樹

    バガン・インベストメント
    COO (取締役執行役員)

    1964年、静岡市生まれ。早稲田大学商学部卒。参議院議員秘書を経て1999年静岡市にPCスクール運営会社、オックスクラブ・ドット・コムを設立、90年からミャンマーに通い始める。2003年、ミャンマーICTパークにてMyanma Dot Netを設立、無線ネットワークによるISP(インターネット・サービス・プロバイダ)事業に進出するも、政変によりパートナー企業が政府に接収されてしまったため、閉鎖を余儀なくされたが、その後もミャンマーに通い続けて現地での人脈を広げていった。2013年1月、日系初のベンチャーキャピタル、バガン・インベストメント社を設立、取締役執行役員に就任。

    http://www.baganinvestment.com

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